2013年3月22日金曜日

『ジャンゴー繋がれざる者』(2012):「A級予算で作ったB級映画」



クエンティン・タランティーノ監督作品『ジャンゴー繋がれざる者』(Django Unchained)は、主演にジェイミー・フォックスを迎えた話題の西部劇映画です。

【あらすじ】
映画は、奴隷制時代の南部を舞台にジェイミー・フォックス演じる奴隷であったジャンゴをドイツ系賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)が解放するところから始まります。そこから、二人はパートナーとなり賞金を稼ぎながら、離ればなれとなったジャンゴの妻をサディストで奴隷主のカルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)から救出するというのが主なストーリーです。

【オススメ度:★★☆☆☆】
タランティーノ映画らしく流血シーンはもちろんサディスティックな暴力シーンがバンバン描かれていますが、低評価の理由はそこにはありません。基本的にはシンプルな設定に加えて派手なウェスタン・アクションがてんこ盛りのエンターテインメント作なので何も考えずに見れば、楽しい映画だと思います。

それでも評価が低い理由には、いくつかありますが、総じて言えば、この映画が「A級予算で作ったB級映画」だからかも知れません。B級映画は低予算ならではの良さがありますが、それを莫大な予算で作ってしまっては元も子もない感が丸出しで受け付けられなかった…という感じです。名優の素晴らしい演技がまぁ〜もったいない!

【注目ポイント:ウェスタン版キル・ビル】
要は、マカロニ・ウェスタンマニアのタランティーノ監督が作ったオマージュ作品な訳ですが、それは『キル・ビル』が日本の任侠映画と香港のカンフー映画へのオマージュ作品だったのと一緒で、そんな映画を見まくっていた若かりし頃のオタクな自分への愛とその時の妄想に浸っているだけ…と言えます。なので、現実にある日本や香港を理解する気持ちもなければ、西部開拓時代の深い歴史認識があるということでもない。そんな自慰行為に等しい映画なんだと思うとしっくりきます。

【深読みポイント:人種】
アメリカ、特に黒人コミュニティーからは、批判が相次ぎ、かなりの物議を醸しました。理由には、史実に忠実ではありえない荒唐無稽の元奴隷がカウボーイになるという設定に加えて、テレビでは放送禁止用語で黒人差別用語である「ニガー(nigger)」という単語を乱用している点があげられます。

無理を承知で例えるなら、第二次世界大戦を舞台に、出っ歯に丸メガネの日本兵の部隊が日本刀を振り回し米兵を殺しまくる映画をアメリカ人が作り、その劇中に米兵が「ジャップ (Jap)」と言いまくり、「軍艦やゼロ戦を造る技術もない劣等民族が!どうせナチスに作ってもらったんだろが!」などと捕虜の日本兵を侮辱し虐げるシーンが何度もある…といった感じでしょうか。そして、とうの監督は、日本人がスカッとする映画を作ったつもりだし、日本からの批判も議論の場を作ってあげられたってことでとても嬉しいと満足げ。

そんな映画に批判がないわけがないですよね…。でも、日本では、その辺が伝わってないように感じます。



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