2013年3月7日木曜日

『ミュンヘン』:復讐とは何か

【2006-02-04のログを転載】

いったいどんな映画なのか、大して分からないまま見に行ったのが「ミュンヘン」。

観る前、映画に関しての情報は、いつだかよく分からないけど自分が生まれる少し前にあったミュンヘンオリンピック(ウェブサイトみたら1972年でした)でのテロを背景にしてること、イスラエル・パレスチナ問題に関してであること、暗殺部隊のドラマであること。監督がスティーブン・スピルバーグであること。それくらい。この映画を見るにあたって、余りにも無防備でした。でも、見た後、1発K.O.という感覚にはなりません。ジャブを喰らい、肝臓を殴り続けられ、フラフラの状態で立たされてる。そんな感じになります。
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スピルバーグ監督作品といえば、CGを多用したSFエンターテインメント作品がぱっと浮かびます。が、この作品は、3時間近い時間の中で少しも心躍る軽快なシーンはないです。始まりから終わりまで重苦しい緊張感が見る者を包む重厚な作品です。

これは国家をあげた「復讐」ドラマの中の人間ドラマ。ナショナリズム・愛国心・イデオロギー。曖昧模糊とした感覚が国を包む。国家を弔いの戦いへと促す。しかし、その国家のための復讐を成し遂げるためには抽象的でも何でもない生身の、血の通った人間を必要とする。そして、例え暗殺者になろうとも憎い敵になろうとも、分け隔て無く人には家族があり、それぞれが心と感情を持っている。この当たり前なのに、忘れがちな事実を描き、「復讐」というものの無意味さ・虚しさを伝えようとしているのが「ミュンヘン」だと思います。

最近の日本で、映画・ドラマが成功する鍵となるのは「感動」だそうです。「世界の中心で愛をさけぶ」や韓国ドラマ。リアリティからかけ離れた感動ストーリー。「泣ける映画」といわれる分かり易い「感動」与えてくれる作品が好まれるそうです。

だとすると、「ミュンヘン」は、全くの大外れ映画になるでしょう。この映画はリアリティがあり過ぎる。だから、見た後、自分が生きている地球を、取り巻く世界情勢を、愛する者を考えてしまうか、生々し過ぎて、考えることを止めてしまうか、どちらかになる。僕も見た後は、後者の状態で暫く上手く話せない状態になりました。

でも、もう一度観たいと今は思っています。そんな映画です。

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