2013年3月10日日曜日

『イルマーレ』(2006)と『サンキュー・スモーキング』(2005)

【2007-10-20のログを転載】

●「The Lake House」(邦題:イルマーレ
キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックの「スピード」カップルが贈るタイムトラベル系ラブストーリーです。ただし、メグ・ライアンとヒュー・ジャックマンの「ニューヨークの恋人」とは違って、タイムトラベルするのは、二人が交わす手紙です。2006年を生きるサンドラ・ブロック演じる女医のケイトは、湖に建つ家を引っ越す際に郵便受けに次に住むであろう人宛に郵便物転送のお願いを書いた手紙を残します。しかし、その手紙を手にしたのは、2004年を生きるキアヌ・リーヴス演じる駆け出しの建築家アレックスでした。彼は、放置されていた湖の家を改修しながら住みだしたばかりでした。この時間軸のずれた二人の間で湖の家の郵便受けを介して文通が始まり、恋へとストーリーは進んでいきます。
二人の生きる2年のズレが生みだす想いの「すれ違い」が、この映画の肝と言えますが、ハリウッド的だと感じるのは、ずれた世界にいる二人であっても一方の行いが他方の未来を変えることです。この辺の時間の考え方(タイム・パラドックスと言うのかな?)は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に代表され、個人的には「オーロラの彼方へ」という映画を思い起こさせるものです。どちらもSFアクションなので、そのアイディアをラブストーリーに織り交ぜる辺りは、新鮮味があるかも知れません。ただ、このタイム・パラドックスを受け流せないと二人の恋の行方に集中できない可能性もあるので、見る人を選びそうです。
ストーリーとしては、始まりから中盤辺りの切ない感じはなかなか良い雰囲気を作っていたように思います。でも、少々ベタで強引さのある終盤が、ハリウッド映画だなぁと感じざる得ないところです。全体としては、期待せずに見ると「なかなか良い映画だったかも…」と感じられる内容でした。SF好きでラブ・ストーリー好きの方、ご鑑賞下さい。

ちなみに、調べてみると韓国映画のリメイクだそうです。もしかしたら、そちらの方が良いのかも知れません。。。

●「Thank You for Smoking」(邦題:サンキュー・スモーキング
英語が苦手な人でも分かるかと思いますが、タイトルは「タバコを吸っていてくれてありがとう」という意味です。禁煙・嫌煙が先進国で進む中、誰がこんな事を言うかと言えばタバコ業界です。この映画は、アメリカのタバコ業界をその広報担当者ニック(アーロン・エッカート)を通して描いています。ニックは、一日1200人が喫煙の影響で死亡していることを知りつつ、その巧みな話術ではぐらかし、タバコ業界のイメージアップに取り組む男です。要は、一般的に言って「悪役」です。「タバコを吸っていてくれてありがとう」なんてタイトルを選んでる時点で皮肉たっぷりのジョークになっているわけですが、そんな彼を通じてタバコ業界を描く点が、この映画を面白くしています。

と、ここまで書くとタバコ業界をこけにしたコメディ映画かと思う知れませんが、もっと深いテーマがこの映画にはあります。それは、アメリカに蔓延するメディアを使った「情報操作」だと言えます。さまざまな業界がある中で、もっとも情報操作にたけているのが、批判に曝され続けているタバコ業界なわけです。この映画でも、ニックはタバコのイメージ向上のために映画業界のドンに掛け合い、ブラッド・ピットやキャサリン・ゼタ・ジョーンズに劇中で「格好よく」タバコを吸わせようと交渉します。そして怖いのは、そのドンがとても乗り気でその日の夜には、金額まで提示し、タイアップ商品開発まで計画を進めてしまうところです。ここまで話が展開すると単なるコメディではなく、ちょっと頭を使う映画になってきます。

しかし、そこはハリウッド映画。ちゃんと笑いへと舵取りをしていきます。その辺から話は、アメリカ人の好物「選択の自由」へとテーマがすり替わり、安心して笑えるコメディ映画で終わりを迎えます。せっかくシニカルだったのに、最後の辺りに漂う「ぼくらは情報を操作されるばかりじゃないんだ。ぼくらには選択する自由な意志があるんだよ。」というおりこうさんなトーンが、残念なところですが、アメリカ人やアメリカに住んでいる人は、結構楽しんでみられる映画かと思います。
なので、それ以外の人には、ピンと来なかったり、アメリカ的な笑いが面白くなかったりするかと思います。。。


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