2013年3月10日日曜日

『ダーウィンの悪夢』(2004)と『ブラッド・ダイアモンド』(2006)

【2007-11-27のログを転載】

アフリカ大陸が舞台の映画を2本観ました。

一本目は、タンザニアでナイルパーチという白身魚の養殖をする地域を舞台とするドキュメンタリー映画「Darwin's Nightmare」(邦題:ダーウィンの悪夢)。二本目は、シエラレオネを舞台としたレオナルド・デカプリオ主演のアクション映画「Blood Diamond」(邦題:ブラッド・ダイアモンド)です。

『ダーウィンの悪夢』
この映画は、公開当初ちょっと話題になったドキュメンタリー映画だった気がします。タンザニアにあるビクトリア湖周辺が舞台です。ここでは、海外輸出用にナイルパーチという白身魚を大量に養殖しているそうで、この映画はそれに関わる人々へのインタビューを主に構成されています。この映画のメッセージは、大ざっぱに言うと国際貿易によりタンザニアの人々は搾取され、大地は汚染されているということです。(しかも、買い手にはヨーロッパだけでなく日本も含まれているんですよ、と映画は語ります。)

なので、挑戦的でジャーナリスティックな映画のように感じます。そして、強き者を罰し、弱気者を救う…そんな姿勢を感じるかもしれません。現に映画の中では、養殖にかかわる貧しい漁師や黙々と機械的に魚をさばく加工工場の労働者、ストリートチルドレンや娼婦など、地域の貧しさを示す人々が映し出され、それと同時に貧相な町並みや赤茶けた不毛に見える大地や濁った湖が映し出されます。また、加工魚の輸出に関わる飛行機が、裏でアフリカの大地への武器輸入に関与しているのではないかと疑いの目を向けます。ここまで聞くと、なんて素晴らしい告発映画なんだ、と思ってもおかしくないですよね。この映画を鵜呑みにしたら、そう思うと僕も思います。

しかし、ドキュメンタリーとは、現実にあるものを映像として収めるわけですが、やはり撮る側の主観というのが撮り方に表れます。この映画では、マイケル・ムーア監督と違い、監督は画面には現れないのですが、彼の映画以上に主観が表れている気がします。というのも、この映画の中では、タンザニアの人々は、受動的で主体性が見えず、タンザニアの自然環境は破壊し尽くされたように見えるからです。よって、彼らがナイルパーチの養殖を中心とした産業をどのように利用して自活しようとしているのか、貧しき中でなにを糧に生きているのか、どういった形で自然環境は残っているのか、そういった視点は欠如しています。そうしたことから、タンザニアのビクトリア湖周辺は、タイトルにあるように「悪夢」として描かれるのです。

「ダーウィンの悪夢」は、一見人道的な映画に見えます。事実、貧富の差や自然環境のバランスは崩れているかも知れません。しかし、この映画には「未来」がないように思います。「アレも悪い、コレも悪い」と指摘するだけの映画では、どうしようもないのではないかと…。なので、この映画を観る際には、予備知識を持つか、一歩引いた視点で観ることをオススメします。

『ブラッド・ダイアモンド』
この映画もアフリカにある国際的な貿易を巡る問題を描いています。こちらは、魚ではなく、ダイヤモンドです。きらきら光るダイヤモンドが実は血に染まっているかもしれないという怖いメッセージをこの映画は伝えてきます。ただ、「ダーウィンの悪夢」と違って、こちらはあくまでフィクション。しかも娯楽アクション映画です。テーマはシリアスであり、事実を元にしているのでメッセージは政治的でもあります。それをあくまで娯楽映画として提示してきたのが、この映画の新しいところだと思います。個人的には、なかなかの意欲作と言えると思います。

主人公は、レオナルド・デカプリオ演ずる傭兵上がりのダイヤ密輸業者・ダニーです。「タイタニック」で爽やかだった彼もこの映画では無精ひげを生やし、しかもマッチョな身体を披露しています。ローデシア(現:ジンバブエ)生まれという設定を受けて、しっかりそっちの訛りの英語を話している様子で、童顔で損している割にはリアリティがある演技でなかなかのものです。そんな彼より良い演技を見せるのが、反政府戦力に捕まり家族から引き裂かれたシエラレオネの黒人・ソロモンを演ずるジャイモン・フンスー。ストーリーは、囚われのソロモンが反政府戦力のダイヤモンド採掘場で、ピンクダイヤの原石を発見し、それを隠したことで大きく進みます。話を知ったダニーは、ソロモンに接近、最初は自らの自由のため騙し取ろうと画策しますが、次第にソロモンの家族への想いに心を動かされていきます。

一筋縄のアクション映画と違うのは、二人のピンクダイヤを求める動きと絡んで、国家と反政府勢力の関係やその敵対関係や紛争により苦しめられる一般市民の姿を描き、また不正輸出されたダイヤモンドがいかにして先進国の市場に流れているのかという現状を映画にしている点です。ストーリーを追いながらも、アフリカの政治的・経済的状況を概観することが出来ます。

えてしてアクション映画は、ストーリーに中身がなかったり、あまりに空想的だったりしますが、「ブラッド・ダイアモンド」は、中身があり、考えさせるこれまでになかったタイプのアクション映画かと思います。近年、ネタ切れ気味のハリウッド映画に、新しい方向性を与えているかも知れません。アクション映画好きで飽きを感じてきた方、一度観てみてはいかがでしょう。


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