2013年3月12日火曜日

『シリアナ』(2005)と『トランスフォーマー』(2007)

【2008-02-14のログを転載】




■ 最近見た映画で一番考えさせられたのが、「Syriana」(邦題:シリアナ)という映画です。麻薬密売とその捜査の流れを両極から描いた映画「トラフィック」の制作スタッフが新たに取り組んだ石油利権をテーマとした政治サスペンス映画です。
出演俳優には、ジョージ・クルーニーやマット・デイモンなど、有名どころもいますが、多くが日本人には馴染みのない俳優人で構成されています。ちなみにジョージ・クルーニーは、制作総指揮にも名を連ねています。

この映画が難しいのは、主題にまず中東の石油利権が絡んでいること、そしてそれを描く「軸」が、5つもあることです。その軸とは、(1)CIA諜報員、(2)巨大石油会社の弁護士、(3)石油関係に特化した経済アナリスト、(4)石油産出国の王子、(5)その国にパキスタンから来た出稼ぎ労働者、の5つです。これらを軸としたストーリーが、同時進行的に描かれ、絡み合いながら映画は、テンポ良く進んでいきます。情報量の多さとスピーディーな展開に、脳みその処理速度がなかなかついていきません。なので、多くの視聴者が、置いてけぼりを食うかも知れません。見る時には、集中力を高めて、知力を働かせる準備が必要かと思います。

しかし、交差するストーリーを咀嚼しながら、最後まで見ていくと、アメリカという国家の怖さ・アメリカ経済(≒世界経済)を牛耳る巨大企業の怖さをヒシヒシと感じてくることでしょう。そこには、最近、政治的活動や平和活動を積極的に行うジョージ・クルーニーの意図を感じることが出来ます。
個人的には、難しくても諦めずに最後まで映画の流れに乗っかっていければ無駄ではない鑑賞時間になるのではないかと思います。


■ そんな映画の後に見たのは「Transformers」(邦題:トランスフォーマー)です。こちらは、アニメが原作の単純明快・勧善懲悪のロボット映画です。それでも、製作総指揮をスティーブン・スピルバーグが、監督を「アルマゲドン」で有名なマイケル・ベイが担当しているので、映像はしっかりしています。ただ、この映画は、スピルバーグが「孫が見ても楽しいものを」というテーマで製作を決めたようで、その辺が「子供向け」的でベタなストーリー展開と現実味のないキャラクター設定を産んでしまったのかなぁと思ってしまいます。

この映画の主人公は、ロボットかと思えば、実は10代後半の冴えない男の子です。そんな冴えない男の子の「大人への成長と恋のお話」と「地球の存亡を賭けた正義と悪のロボット生命体の戦い」とが、強引にまとめられて映画となっているので、どうしても現実的に映ってこないのです。しかも、男の子の話や米軍の話がくどいほど続いてなかなかロボットの姿がはっきり見られないんですよね。

なので、この映画を見て、大人が楽しめる要素は、要所要所で挟まれるCGで再現されたロボットの変身シーンしかないのではないかと思ってしまいます。よく作り込まれたCGと音響は、「アニメや玩具のロボットが現実に現れたらどうなるんだろう」という子供の頃の想像を現実味のある形で映画の中に再現してくれています。CG担当者のフェティシズムが感じられ、同じようにロボット物が好きな人は、それだけ見るためにレンタル(または購入)するのも良いかも知れません。(=多くの女性は、見ても何にも面白くないでしょう。)
次回作も製作が決定しているようです。次回は、ダラダラとしたヒューマンドラマを押さえて、ロボットを全面に出してくれたらもう少し面白く見られる映画になるかも知れません。

余談ですが、この映画の主人公、「10代後半の男の子」というのは、アメリカの映画館収入のコアターゲットでもあります。なので、「トランスフォーマー」の主人公は、アニメが原作だから子供を主人公にしたというより、大きな映画収入を見込んでの計算された設定なのだと考えられます。コアターゲットが感情移入しやすい設定という訳です。だからこそ、例えば10代の男の子が夢想するちょっと大人っぽくてセクシーな同級生の女の子との恋なんていうのも盛り込まれています。青少年向け映画にありがちな教育的・啓蒙的なストーリーの中にも、そうしたニーズを受けた商業的画策が入り込んでいるというわけですねぇ。


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