2013年3月14日木曜日

『インセプション』(2010):注目ポイントは渡辺謙!

【2011-06-07のログを転載】


帰国してしばらく映画を見ていなかったのですが、帰国して最初の映画は「インセプション」(原題:Inception)でした。

最新のバットマンシリーズ監督であるクリストファー・ノーラン監督のSF作品です。主演はレオナルド・デカプリオですが、日本では渡辺謙が出演していることでも注目されたのではないでしょうか?

【あらすじ】
デカプリオ演じるドム・コブは、特殊な装置を使いターゲットの人物と一緒に共有する夢の中へ落ち、その夢の中から欲しいアイディアや情報をターゲットから盗み取る一流の産業スパイ。そのコブの前に現れたのが、渡辺謙演じる国際的大企業トップのサイトウ。サイトウは、コブに仕事を依頼するが、その内容は、アイディアを盗むことではなく、逆にある人物にアイディアを「植え付ける」こと。非常に難しい依頼内容に挑むためコブは知る限り最高のチームを結成し、その難題に挑むというのが大まかなストーリーです。

【オススメ度:★★★★☆】
この映画は、よく作り込まれたSF作品ですが、その分、「夢」の概念などその世界観をまず理解するのに苦労するかも知れません。しかし、そこを通り越せば、その不思議な映像体験にどっぷりと浸かり、楽しい鑑賞体験になると思います。特にSF作品が好きならば…。

【注目ポイント:渡辺謙!】
詳細なストーリーやコンセプトに関しては、さまざまな人が感想を書いているのではないでしょうか?僕が個人的に注目したのは、渡辺謙です。或いは、彼の役サイトウです。

渡辺謙は、「バットマン・ビギンズ」に続いてノーラン作品には2度目の出演となっています。「バットマン・ビギンズ」では、さすがアメコミという感じでヒマラヤ奥地の密教とニンジャを合わせたような荒唐無稽な暗殺ニンジャ集団のトップという悪役でしたが、今回の役は、大企業のトップです。

「サイトウ」というこの役を渡辺謙が演じたことは、ハリウッド映画史の中で考えるととても意義のあることなんです。アジア系俳優がハリウッド映画に出演する場合、あてがわれる役は決まってサムライやニンジャのようなステレオタイプ的キャラクターがほとんどです。多くのアジア系俳優がそうしたタイプキャスト(似た役を毎回あてがわれること)に悩まされ、ハリウッドを去っていきます。そうした歴史を振り返った上で、今回の渡辺謙の役を見ると、その異例さに気づきます。そう、サイトウが格好良いと…。特殊効果だけでなく、ぜひ彼の活躍にも注目して欲しいと思います。

【深読み】
ここから先はもっとマニアックに、どう「サイトウ(渡辺謙)」が注目に値するのかについてです。興味ある方だけどうぞ。

ポイントは3つ。

1.「名前」:まず初歩的なことですが、名前です。欧米の白人が聞いて「オリエンタル」な響きの適当な名前であることはよくあることです。名前が「サイトウ」という実在する姓であることは、小さな事ですが結構重要な点です。

2.「チームの一員」:第2のポイントですが、サイトウは、アジア系の配役でありがちな悪役(最近では「エアベンダー」で問題となりましたが…)ではなく、コブの味方側となってチームの一員となることも大切です。

3.「ピエロじゃない」:そして3点目は2点目と関係するのですが、味方となった彼がスタイリッシュにスーツを着こなし、訛りがありながらも流ちょうに英語を話し、また、その頭脳明晰さを披露する役であることです。

<解説>
よくあるパターンとしては、味方となってもアジア系俳優は、その一味のお笑い担当であることが多々あります。英語が話せなかったり、話せても訛りを笑いにされたり、大げさに例えると日本人役であれば現代なのに何故か着物を着せられたり日本刀を持たされたりして変人として笑い物にされてしまいます。それは、アジア系が欧米の主流文化の埒外にあり、世間知らずだという認識が白人中心文化の中で共有されているためです。ですから、サイトウが訛りのある英語を話しているにも関わらずチームの一員となっていること、そして、ピエロ化されていないことは、気づきにくいことですが、評価されるべきことかと思います。

【まとめ】
サイトウの活躍には残念な点(映画後半部分の登場シーンの激減など)等もありますが、大型ハリウッド映画において渡辺謙がこの「サイトウ」という役を得たことは、小さな事かも知れませんがアジア系俳優が新しい形で活躍できる役を一つ増やしたという点で注目に値すると思います。

「インセプション」を見た感想を話す機会がある方は、こんな点について話すとちょっと通っぽく気取れるか、または、蘊蓄が過ぎてウザがられるかと思います。その点を加味して参考にしてもらえればと思います。


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